あなたの悩みを思い出に、弁護士の山田です。今日は平成30年の相続法改正、これについての遺留分制度に関する見直しについて若干ご説明したいと思います。

 

遺留分制度の見直し、遺留分というのは以前も動画でご説明したと思いますけれども、遺言書をもってしても侵害することはできない取り分のことを遺留分と言います。これがどういう制度見直しになったのかというと、遺留分減殺請求権から生じる権利を金銭債権化するということ、そして受遺者又は受贈者の請求により裁判所が金銭債務の全部または一部の支払いを相当の期限を許与することができるようにするということが認められました。これは金銭を直ちに準備できない受遺者又は受贈者の利益を図るためという風に言われています。

 

では、具体的にどういうことかというのをちょっと具体例を示しながらご説明したいと思います。

経営者であった被相続人が,事業を手伝っていた長男に会社の土地建物を,長女に預金を,相続させるというような遺言を残して死亡した。配偶者は既に亡くなっていたと考えてください。これで遺言の内容に不満の長女が長男に対し遺留分減殺請求を行使したという事例を考えましょう。

この会社の役員の方、被相続人の方が、預金1,000万円、会社の土地建物が評価額として1億円あるとして、これをそれぞれ長女と長男に相続させるという遺言をしました。この場合に長女は私は取り分が少ないんじゃないのと言って長男に対して遺留分を侵害されてるから遺留分減殺請求しますという風にしたとしてください。

この場合にはどういうことになるのかというと、まず長女が侵害されている遺留分額を計算するとこういうことになります。遺産総額が1億1000万円で、そこから法定相続分が1/2ですから、それの1/2が遺留分ということになりますから1/4ですね。1億1000万円かける1/4で、既に長女は1000万円取得しているので結局1750万円が足りない、 つまり遺留分が侵害されているという風にされます。

これまでは長女が長男に対して、その1750万円のお金を払ってよということはダイレクトには言えなかったんですね。というのは遺留分というのはその目的物それぞれに対して生じると考えられていました。つまりこういうことです。長女は 会社の土地建物に対して1億1000万円分の1750万円の持分がある。長男については1億1000万分の9250万円の持分があるという風になってたんですね。

ただそうなると結局共有状態になってしまいます。そうすると共有状態で色々問題になってきます。特にこの土地建物だけでなくて会社の株とかが相続財産になっていた場合には、会社の事業承継がうまくいかないというような問題点がありました。

 

そこで法改正でどうなったのかと言うと、遺留分減殺請求したというような場合には、この土地に対して持分があるというようにしないで、金銭債権として1750万円払ってねというような権利があると言えるという風にされました 。

名称も今までは遺留分の減殺請求権と言ってたのですけども、そうじゃなくて遺留分の侵害請求権という名称に変わりました

 

遺留分制度の見直しのメリットとしてはどういうことかと言うと、さっき言ったように当然に金銭債権お金を払ってねと言えるという権利になりましたので、共有関係が当然に生じることを回避するということができます。あと遺贈や贈与の目的財産を受遺者等に与えたという遺言者の意思を尊重することができます。あくまで会社についてはもう長男に渡したい、長男がやってくれというお父さんの希望、これをできるだけ尊重できるような制度になったという風に言われています。

 

あと遺留分侵害請求についての特徴としては、一つが金銭債権化されたということに伴って、いきなり1750万円払えという風になったとしても、長男としてはお金がすぐ用意できないというような場合が考えられます。
そこでこの裁判所が支払いについて相当の期間これを許与できることが認められました。それから請求範囲、これが相続開始前の10年間に限定されると、どういうことかというと、法律的に見ると難しい言葉で婚姻もしくは養子縁組のため、または生計の資本として受けた贈与、特別受益のようなことですね、これについては10年以上、10年どころか無制限ですね、時期を問わずに遺留分を算定する財産の価額として計算してたんですね。それだと昔に遡ってと言うところがあまりにも煩雑だろうというようなことで、結局10年間、相続開始前、ようするにお父さんがの亡くなられる前の10年間だけに特別受益については算入は限定しましょうというような制度にされました 。

以上、遺留分侵害請求についてご説明しました。

 

遺留分